【インタビュー】TODA BUILDING 日本空間デザイン賞2025入賞!!

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TODA BUILDING 戸田建設株式会社 設計・施工 / 2F・3F内壁、6F内壁・天井 MORART特注仕様
(※写真集「TODA BUILDING」表紙より引用)

昨年9月に竣工した「TODA BUILDING」、戸田建設株式会社の本社ビルです。
地域へひらかれた建物正面のパブリックスペース、そして開放的なエントランスホールからエスカレーターで上階へつながる2階「SHOP&RESTAURANT」、3階「GALLERY COMPLEX」および6階「CREATIVE MUSEUM TOKYO」の内壁・天井の大部分に「MORART」特注仕様が採用されています。また6階の「CREATIVE MUSEUM TOKYO」は、日本空間デザイン賞2025に入賞し、ますます建築・デザイン界では注目を浴びております。このたび「MORART」(モラート)を主役とした写真集(撮影:公文健太郎)の刊行を記念し、戸田建設株式会社 建築設計統轄部 建築設計第1部 一條様に、コンセプトおよび「MORART」の採用に至った経緯など大変貴重なお話を弊社代表 杉山および営業担当課長 内海がお話を伺いましたので、ここにご紹介いたします。

【フッコー】
この度は竣工おめでとうございます。
すこしお時間がかかりましたが「MORART」の写真集が完成いたしました。
壁をメインに撮影した、一般的な竣工写真とは異なるテイストの建築写真集ですので、ぜひご覧ください。
さて今回ご採用いただきました「MORART」のお話を伺う前に、まずは「TODA BUILDING」の設計コンセプトなどを伺えますでしょうか?

【一條氏】
私ども戸田建設があるこの地域は、江戸時代は大鋸町(おがちょう)という主には大鋸職人(木挽)が集住した職人の町でした。ここは他にも刀鍛冶や刀の鞘をつくる職人や金箔などの箔押しをする職人などもおり、様々な分野の職人が集合した「ものづくり」の町でした。
そして「京橋」とは日本橋から京へ(京都へ)向かう最初の橋を渡ることから「京橋」と命名され、京へとモノを運ぶ「ものづくり」の盛んな地域でした。そしてわれわれ戸田建設は今年で創業144年になり、そのうち127年はここ京橋におります。この地「京橋」で社屋を建て替え今回の計画で5代目の建築、本社ビルとなります。この「ものづくり」の町にいることは、建築を担うわれわれにとっては非常に重要なことであり、今回の「TODA BUILDING」のプロジェクトでは、戸田建設が育ったこの町に「何を還元、恩返しをできるのか」を考えたことが開発のスタートでした。

【フッコー】
老舗の左官鏝屋さんもありますね、刀鍛冶から左官鏝への変遷など、京橋はまさに職人の町ですね。

【一條氏】
今回のプロジェクト、中央大通りに面して、既存のビルの建坪と同じだけの広場を大通りに面し設けております。ここ京橋ではいままで多くの再開発が繰り返され、ほとんどの建物が商業的要素を考え中央大通りに対して建物の奥へと貫通したスペースを設けたものが多く、大通りからセットバックすることは一般的には考えられません。つまり銀座と日本橋を結ぶこの素晴らしい通りに、人が集まり、寄り添うようなスペースがなく、ただの通過道線となっておりました。京橋がもつポテンシャルは非常に高く、裏手には骨董通りがあり、その骨董の歴史は青山の骨董通りよりも古く、アートが根付いた、文化的香りの強い地域です。以上のことを踏まえて、文化的要素から「アート」と「ものづくり」を開発のコンセプトとし、隣のアーティゾン美術館(旧:ブリヂストン美術館)はクラシカルで学問的なアート、われわれ「TODA BUILDING」は若手や新進気鋭のアーティストの育成をしていこうと考え計画しました。

【フッコー】
建物のなかはどのようなプランでしょうか?

【一條氏】
「TODA BUILDING」の中にある「APK PUBLIC」とした共用スペースには、1年から1年半を一つの期間として、キュレーターによって選定された若手アーティストが自身の作品を発表する「場」として支援をしております。その後、10年、20年と経ち、彼らが隣のアーティゾン美術館に展示されるアーティストへ成長すると、つながりが生まれてきます。フッコーさんの「MORART」を採用したフロアは2つありますが、まず6階フロアの「CREATIVE MUSEUM TOKYO」は、ポップアートなどサブカルチャーと言われていた分類のすそ野を広げて、アート・芸術の世界へと引き込んでいく役割をもたせています。これらを通じて、この京橋という場所が、また異なった趣の「アートの発信地」となったら良いなと考え計画しました。

【フッコー】
今回アート作品を展示する空間に弊社の「MORART」をご採用いただきました。その採用に至った経緯などはいかがでしょう?

【一條氏】
「TODA BUILDING」は手仕事感(ものつくり)を体感させる建物として計画し、まず1階まわりをアーキテクチュアルコンクリートで仕上げ、その雰囲気によって親しみを感じる空間としています。エントランスホールなどに使用しているタイルは、窯の温度によって美しいムラ感のある発色で焼きあがった4種×9サイズ、実に36パターンのタイルを職人さんにバランスよく配置していただいて、自然にできたその色合いを感じるよう工夫しています。そして次に左官材「MORART」です。左官材といえば様々なメーカーさんがいらっしゃいますが、やはり色々なアレンジを加えたかったですし、こういう時は多くの製品ラインナップと実績があるフッコーさんに一度相談してみたいなと思ったのが始まりです。
1階から4階までは開放的な外を感じる空間としてあるので、エスカレーターから6階にあがるととガラッと雰囲気が変わる少し閉鎖的な空間にしたく「洞窟」をイメージしました。それは大谷石の採掘場のようなボリュームとボリュームの間にある隙間から感じる、なにかワクワクするような空間としたく、それを踏まえフッコーさんへ相談し、標準の「MORART」ではなく、イメージに合うもっと手仕事感の強い「MORART」を要求しました。そして幾度となく打合せを重ね「MORART」へ特別なアレンジをしていただいて、目指していた「洞穴」のような空間となる仕上がりを実現することができました。そして6階フロア「CREATIVE MUSEUM TOKYO」の空間にはダウンライトは一切なく、間接照明のみで空間を演出しており、間接光で壁面・天井面の仕上げ「MORART」をふわっと明るくさせることで左官職人の手仕事が活きさせ「洞窟」のイメージを再現できました。

【フッコー】
お打ち合わせを重ねる中で、この特注パターンの「MORART」を壁面・天井面、そしてこのボリューム(面積)。最初は「こりゃなかなか大変だ・・・」と思いましたが、皆様の熱意とともに我々も技術力が高い左官職人と打ち合わせ、試し塗り、パターン合わせを繰り返した結果、特注パターンの「MORART」が壁面・天井面を纏い、この素晴らしい空間が出来上がりました。我々フッコーにとっても「これはやり切った!!」という大きな達成感を得られた素晴らしい仕上がりです。

【一條氏】
今回、施工していただいた職人さん達は本当に素晴らしく、こちらの要望をすべて聞き入れた、その表現力・実行力には脱帽しました。本当に素晴らしい「ものづくり」の感性を持った施工チームでした。心より感謝しております。
まずは3階の「GALLERY COMPLEX」から施工がスタートしましたが、ギャラリーの白い空間と相反する空間としてすべて黒の「MORART」としました。2つの空間を分ける意味でも「白」と「黒」とし、石材やパネルなどの他の選択肢もありましたが、左官の手仕事の良さがわかるムラ感と左官の特徴でもあるシームレス(目地なし)で、さらに防火扉などの鋼製下地にも施工できる「MORART」を採用いたしました。「MORART」の施工がスタートし、その仕上がりを見た瞬間「これはいける!」と確信しました。
それはわれわれ設計チームだけでなく、施工チームもみな同じ気持ちでした。

3階 GALLERY COMPLEX 
コテ跡が浮き出す「手仕事感」を感じる「」特注仕様

【フッコー】
それは我々にとっても同じで、まさに設計者・施工者・メーカー・職人に一体感が生まれた、鳥肌が立つ瞬間でした。

【一條氏】
イメージ通りの仕上がりが実現できたのは、我々の気持ちをストレートに伝え、現場の状況に応じ施工的なリスクを回避しながら、左官職人がアレンジした、本当に素晴らしい施工をしていただきました。施工的な制約から6階フロア「CREATIVE MUSEUM TOKYO」はねむり目地を設けましたが、この目地も試行錯誤を繰り返し、こだわって納めていただいたので本当に美しいです。

6階 CREATIVE MUSEUM TOKYO
「洞窟」をイメージした空間、「」の特注パターンが活きている

【フッコー】
左官の良さ=シームレス(目地なし)、とはよく言われますが、下地や施工的な制約によってどうしても目地を設定しなくてはならないシチュエーションもあります。今回はねむり目地を設け、この仕上げは手仕事感を与えながらも「左官なのか?石材なのか?」という印象を持たせ、目地を活かしたとても特徴ある仕上がりとなっています。このような仕上げ方、魅せ方は我々にとってもとても勉強になり、まさに新しい発見でした。

【一條氏】
竣工以来「この空間の仕上げ何を使っていますか?とても美しい!」と多くの方からご質問と感想をいただいています。やはり特別にアレンジした「MORART」は、この空間を活かしています。故槇文彦先生をはじめ多くの建築家がフッコーさんの多種多様な左官材を使われてきておりますが、左官をよくご存じの関係者でもこの仕上げを褒めてくださるので、とてもうれしいです。まさにこのような空間を創りたかった。このボリューム、積層がずれ、そしてその隙間から光が漏れるような、まさにイメージが形となりました。
エスカレーターから上がって感じる印象にも非常にこだわりましたので、皆様にはこの空間の照明の使い方もぜひ見ていただきたいです。

6階 CREATIVE MUSEUM TOKYO
間接照明による空間演出が「MORART」を活かす

【フッコー】
弊社は、既存の製品からアレンジを加え、・デザイナーの方々が持つイメージをいかに表現するかということに力を入れております。今回の「TODA BUILDING」においても、イメージを表現することができとてもうれしく、また弊社としてもとても良い経験、実績となり、またひとつ大きな自信を持ちました。心より感謝しております。

【一條氏】
市場には多くの製品があり、メーカーがおりますが、このような形で設計者のイメージを表現していただけるというのも初めての体験に近く、われわれ設計者にとってとても良い経験となりありがたい限りです。また新しいプロジェクトなど、左官仕上げにチャレンジしてみたくなりました。今回はありがとうございました。

設計者が持つイメージを再現する。
色・質感、そして現場の制約など、それは我々フッコーにとって、そのひとつひとつがとても大きな経験となります。
納めさせていただきました「MORART」は、発売より多くのプロジェクトへ納入されております。製品コンセプトは「左官の常識を超える、次世代のアーティスティックモルタル」。「MORART」は壁だけでなく、床・天井・・家具、そして水回りにも使用でき、また非常に塗りやすく扱いやすい、左官職人の活躍の場が拡がる左官職人に寄り添った仕上げ材です。
我々フッコーは、皆さまが持つ仕上がりイメージをいかに再現するか、日々挑戦しております。
「多彩な建築表現、原点は素材です」
をブランドコンセプトに、これからも建築を纏うメーカーであるために精進してまいります。
みなさま、京橋に行かれた際には、ぜひ「TODA BUILDING」を訪れてみてください。
設計者の想いがたくさん詰まった建築作品です。

本対談は、戸田建設株式会社 建築設計統轄部 建築設計第1部 主幹 一條 真人 様にご協力いただき実現いたしました。
心より御礼申し上げます。

リンク先
プロジェクト:TODA BUILIDING(日本空間デザイン賞入賞)
製品:MORART
撮影:公文健太郎

記念写真集「TODA BUILDING」より抜粋
ご覧になりたい方は、担当営業もしくは本社/工場までお問合せください。
問い合わせ先:kofu@fukko-japan.com

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