7月3日、池袋に新たにオープンしたhotel Siro。
上階へと様々な形状の特徴ある外階段が印象的なホテル。
最上階にはグランピングが楽しめるスイートがあり、都会の真ん中でキャンプもできる、なにか新しい、特別な体験ができるホテルである。
https://hotel-siro.jp/
今回は設計・プロデュースおよび上階の客室デザインを手掛けられた、MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOの原田真宏主宰と原田麻魚代表、そしてプロジェクトを担当されたアソシエイトアーキテクト武井氏にお話を伺った。
http://fuji-studio.jp/
右手前からマウントフジアーキテクツスタジオの原田麻魚氏、原田真宏氏、武井氏、左が私
本題に入る前に原田夫妻とはもう16年ほどのお付き合いになる。
静岡で工務店(桑高建設)を営む私の大学時代の級友から誘われ、2004年のMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOの作品、渋谷のビルの屋上に作られた「Secondary Landscape/屋上のランドスケープ」で原田夫妻に会ったのが最初である。
その直後(時間軸が不明瞭だが)、再度、工務店の彼からMOUNT FUJIの仕事を請けたから見に来てくれと誘われ、行ったのが建築中であった「LIGHT LIGHT SHELTER/Toririn」であった。
一応、建築学科を卒業した私でも、屋根の重なりをみて、これはただ事ではないな、と思ったのを鮮明に覚えている。
それからMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOの作品に度々ご採用いただくことになるのだが、一つ一つの作品に込められた力には都度、驚かされている。
後にも出てくるが、「KASA/傘の家」ではMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO+桑高建設+フッコーの3社の関わった最初の現場である。
プロジェクト名のとおり、1本の傘のような構造体を軸に、そのなかに家族が集まる建築。
その複雑な構造に対して嬉しそうに級友が汗を流し、立ち向かっていたのを、そして夏真っ盛りのオープンハウスにドライブがてら幼い娘を助手席に乗せて行ったのが良い思い出である。
今回のプロジェクト、hotel Siroの上階客室内装に当社のBaby Skin Wallをご採用いただいた。
上階のコンセプトは、池袋の「街」の存在を感じ、訪れた「街」そのものに自分が一晩過ごしたと言える経験を与えることができる、まさに「街」そのものに泊まるホテル。街路からつながる階段で路地的な要素を持つ外廊下を抜け、日本旅館を彷彿とさせる縁側+土間を抜ける部屋の構成は、日本文化も色濃く、そして現代的でもある。
Baby Skin Wallは2016年の作品、KASA/傘の家の内装壁にご使用いただいたのがスタートである。
この製品の特徴は、自然素材である火山灰の堆積物シラス(白洲)と藻などの堆積物の珪藻土を使用した内装用の左官材である。これらの粒度の異なる二つの素材を併せることで柔らかい質感と肌触り(Baby Skinの由来)そして施工のしやすさなどを引きだしている。
「KASA/傘の家」ではなるべくフラットな仕上がりというご要望から、左官職人の腕の見せ所、鏝のみの微妙な鏝跡の残るフラットな仕上がりであり、それはとても綺麗な表情となった。
KASA/傘の家
hotel Siroの10階客室には中庭があり、優しい木漏れ日が差し込む池袋の真ん中にいるとは思えない居心地の良さがあると原田麻魚氏はおっしゃっていた。
上階のコンセプトは「街」のなか、「街」そのものに泊まるホテル。
そんな客室の壁にBaby Skin Wallが仕上げられている。
そして、Baby Skin Wallのフラット仕上げ、左官職人がさらに表面に機械磨き(サンディング)をかけ、鏝おさえのみ仕上げとは異なる表情の美しい仕上がりとなった。
表情が非常に優しく、光の吸収具合が柔らかで光が差したときのテカリや反射がないのが良く、とても気に入っていると原田真宏氏からありがたいお言葉をいただいた。
昨今の建築では均質化するために乾式材や貼りもののような均質的な製品が増えているため、大きい空間で使用した場合、その空間自体が工業製品の塊のような印象を与えてしまうともおっしゃっていた。
Baby Skin Wallは、自然素材を使い、左官職人が鏝で塗り上げる、まさに反対側の存在である。
光の拾い方。
その素材が光を拾った時に見せる表情やグラデーションなど、均質化された製品では表せられないような仕上がり・製品を常に求めていると原田夫妻は語っていた。
偽物では表せない美しさがそこにはあると思う。
建築の話、壁材の話など時間を忘れて楽しい時間を共有させていただき、非常に勉強になり、Baby Skin Wallの魅力を再発見した。
左官材メーカー冥利に尽きる、これからもこだわったものづくりに精を出していきたいと改めて感じた。